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鏡を見るたび、チラホラと白髪を見つけるようになってきた…とはいえ、まだ全体的には目立ってきていないし、とりあえず数本なら抜いちゃってもいいかな?という人は多いのではないでしょうか。
実は筆者も、パッと見はまったく白髪が目立ちませんが、よくよく探すと数カ所に白髪が生えてきているエリアが。染めるほどでもないし、毛抜きで抜いた方が早い!と定期的に抜いているのですが、誤って黒い髪を抜いてしまったり、抜いた後ちょっと頭皮がズキズキしたりと、あまり良くないな…と感じているところです。
少しの本数なら、白髪って抜いてもいいもの?それとも根本からカットした方が正解?今回は白髪に関するスペシャリスト・毛髪診断士の方にいろいろ教えていただきます。
抜くと白髪は、「増える」or「減る」どっち?
よく、「白髪を抜くと逆に増える」といった噂を耳にしませんか?「抜いた隣の毛まで白髪になる」といった都市伝説のような話もありますよね。
しかしながら、これらはすべて迷信のようです。
おそらく、「年齢をかさねるにつれて白髪の量が増えること」、「気になりだすと暇さえあれば白髪を探してしまい、見つけると『やっぱり増えてきた…!』と思ってしまうこと」、そして「白髪を抜くといったん髪が黒い状態になるので、そこに新たな白髪が生えてくると、急に白髪が増えた印象になること」などが、そのような迷信が広がった理由だと考えられます。
では、本当のところはどうなのでしょうか。
白髪は抜いても「増えない」し「減らない」!
「いろいろな噂がありますが、実は白髪は抜いても増えるということはありません。反対に、減ることもないんですよ」
とは毛髪診断士の久留原さん。
白髪を抜いても増えないし、減ることもないのであれば、やっぱり手っ取り早く抜いた方がいいような気がします。
「ちょっと待ってください、白髪を抜くのは絶対におすすめできません!」(久留原さん)
抜くのを辞めないと、頭皮へのダメージ大!
「確かに、白髪を抜いても本数に変わりはありません。けれども、髪が自然に抜け落ちるのと違って、毛抜きなどで無理やり毛髪を抜くということは、毛根周辺の皮膚や毛細血管などを傷つける恐れがあります。頭皮に大きなダメージを与えることになるのです。
また、1つの毛穴から髪が2~3本生えていることも多く、 1本白髪を抜くことで、同じ毛穴から生えているほかの健康な黒髪にも悪影響を与えてしまいかねません」(久留原さん)
なるほど…。抜いた白髪1本だけに影響するのではなく、周りの健康な髪にまで強いストレスがかかってしまうのですね。しかも、場合によっては、無理やり抜いた毛穴からはその後髪が生えてこなくなる可能性もあるのだとか。
白髪は嫌だけど、薄毛になっても困ります。1本や2本くらい抜いても…と思っていましたが、ちょっと怖くなりました。
抜くのではなく、カットしたほうが良いけれど…
では、抜くのが頭皮に良くないなら、根本から白髪を切ればいいですよね?
「確かに、抜くよりはカットした方が髪のためには良いのですが、白髪対策としてはあまりおすすめではありません。
というのも、白髪を根本から切れば、しばらくは目立ちません。けれど、その毛が伸びてくると、ツンツンと垂直に立ってしまい、反対に目立ってしまう可能性があるのです」(久留原さん)
実は白髪は、黒髪に比べて扁平傾向、つまり断面が丸ではなく平べったい形になりやすいという研究データがあります。ハサミなどでカットすれば、なおさらですよね。
髪の断面が平べったいとうねりなども出やすく、ほかの黒髪よりもツンツンと飛び出してしまいやすいということなのです。特に、頭頂部や髪の生え際、髪の分け目は要注意。
また、白髪が生えはじめた頃は、黒い髪の中に数本白髪がある状態です。黒の中の白い色はとても目立ちやすいですよね。そのため、ロングヘアなら周りの毛に紛れやすいですが、ショートカットの場合はカットした白髪が伸びてくると目立ちやすいかもしれません。
さらには、慣れないと白髪と間違えて周りの黒い毛までカットしてしまいがちです。そのまますぐに伸びてくることを考えると、白髪をカットする方法もあまり得策ではなさそうです。
では、白髪ができてしまったら、どうするのがベストなのでしょうか。それにはまず、白髪ができるメカニズムや増える原因から見ていきましょう。
白髪が生えるメカニズムと増える原因
私たちの髪の毛は、もともと白い色をしています。そこに、色素細胞(メラノサイト)の働きによって作り出されたメラニン色素がつくことで、黒髪に見えているのです。
白髪ができるということは、何らかの原因によってメラニンを作り出すことができなくなり、髪が白いままになっている状態であると言えます。
では、どうして白髪が増えるのでしょうか? 白髪増える理由にはいくつかあります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
原因1:加齢
もっとも大きな理由が「加齢」です。
「メラノサイトの働きが加齢によって低下していき、次第に髪を黒くするだけの十分なメラニン色素が作られなくなります。そのため、髪が白いままの状態である白髪が増えていくのです」(久留原さん)
原因2:ストレス
現代人が抱えるストレスも、白髪が増える原因のひとつ。
「メラノサイトはストレスにとても弱く、精神的に強いストレスを感じていると、メラニンを作り出して髪を黒くする働きが低下してしまいます」(久留原さん)
ただし、何かショックな出来事などがあって髪の色が一気に白くなった、といった噂を聞いたことがあるかもしれませんが、すでに生えている髪が急に白く変わることは考えられないのだそう。
強いストレスを抱え続けて、新しく生えてくる髪が白くなる…という可能性は十分あるそうですよ。
原因3:遺伝
10代や20代でも白髪が生えてくる人がいます。「若白髪」などと呼ばれますが、これは遺伝的な要因が強いと考えられているようです。
「通常であれば、30代後半から40代頃から白髪が目立ち始めますが、それ以前の早い段階から白髪が増えるようであれば、遺伝が関係している可能性が高いと言えるでしょう。そのほか、先天的にメラニンを生成する能力がない人なども遺伝的に存在します」(久留原さん)
白髪をこれ以上増やさない対策方法
白髪ができる原因や増える理由を理解したら、次は白髪をこれ以上増やさないための対策を確認しましょう。
健康な黒髪が生えてくるには、頭皮が健康な状態であることが必要です。頭皮の血行が良く、毛細血管から毛母細胞へしっかりと栄養が届けられる状態であれば、作り出される髪の質や量へも良い影響を与えます。よく、農作物がうまく育つためには土壌作りがカギだと言われますが、頭皮と髪においても同じような関係だと言えるのです。
ここからは、白髪を増やさない、つまり健康な黒髪が生えやすいような状態を整えるために必要な対策3つのポイントをお伝えします。
対策①十分な栄養素を摂る
第一に、バランスの取れた食事を摂ることです。
大阪大学大学院 教授の板見 智先生は、『やさしくわかる! 毛髪医療最前線』(朝日新聞出版・刊)のなかで次のように述べています。
“毛髪を作り出している毛母細胞は全身の細胞の中でもトップクラスに分裂や増殖がさかんな細胞なので、いくつもの栄養素や多くの酸素を必要とします。
これらは血液に含まれた状態で、すみずみまで張り巡らされた毛細血管をとおって毛包へと運ばれます。つまり健康な髪を生やすためには、血液の材料となる栄養バランスのいい食事を摂ることが大事。”
『やさしくわかる!毛髪医療最前線』より引用
「さらには、髪に良いと言われている栄養素を積極的に摂ることも、白髪を増やさないために大切です。たとえば、昆布やわかめなどに含まれる『アルギン酸』やレバーに多く含まれる『パントテン酸』、『亜鉛』などの栄養素は、健康な髪と頭皮を生みだすのに必要だと言われています」(久留原さん)
いずれにしても、偏った食事ではなく、いろいろな食品を意識的に摂ることが大切なのですね。
対策➁ストレスを溜めない
先程お伝えしたように、ストレスは白髪の大敵! とはいえ、仕事や家事、育児でイライラしたり、何か精神的に不安を抱えることは多いものですよね。そんなとき、そのストレスをできるだけ溜めないことが大切です。
ぬるめのお風呂にゆったり浸かる、好きな音楽を聴く、映画を観て思いきり笑ったり涙を流す、アロマを焚いてリラックスする…なんでも構いません。何か自分が心地よくなるようなストレス解消法を見つけておくと、たとえ何かストレスを感じたとしても、上手に発散していけるでしょう。
「それから、睡眠不足も髪や頭皮に良くありません。十分な睡眠をとっていないと血液の流れが滞り、髪を生やすために必要な栄養を届けられなくなってしまいます。体にとってだけではなく髪にとっても、睡眠はとても大切です」(久留原さん)
対策③健康な頭皮の状態を保つ
先にも述べましたが、健康な髪を育てるためには、土壌となる頭皮の状態を整えることが大切です。頭は毛細血管の末端なので、先の先までしっかりと栄養を届けなくてはいけません。そのためには、血流をしっかり流してあげることが必要です。
頭皮マッサージ
自宅で簡単にできることのひとつが、「頭皮マッサージ」です。
「側頭部、頭頂部、後頭部をまんべんなく、手のひら全体を使ったり、気持ち良いと感じるポイントでは指でゆっくり圧をかけたりして、頭皮全体をほぐすようにマッサージしましょう。耳周りも血管がたくさん集まっている場所なので、意識的にマッサージするといいですよ」(久留原さん)
シャンプーのしすぎにも注意!
頭皮を清潔に保つために「每日シャンプーを欠かさない!」なかには「朝もしっかり洗っています!」という人もいるかもしれませんが、実は洗いすぎも頭皮には良くないのだそうです。
「必要以上に髪や頭皮を洗いすぎると、頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまいます。また、市販のシャンプーの中には、洗浄力を高めるために髪にあまりおすすめではない成分を使っているものも。多くの医師や毛髪の専門家は、シャンプーを使わずに洗髪する『湯シャン』をおすすめしているほどです」(久留原さん)
「湯シャン」に関しては、こちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧くださいね。
▼湯シャンが白髪改善に効くって本当?最適な温度は?お湯・水・塩シャンどれが一番いい?
白髪を見つけたら、抜かずに切らずに、頭皮環境を整えて健康な髪を育てることが重要だということがわかりました。毛髪診断士久留原さんのアドバイスをもとに、少しでも白髪を増やさない生活を心がけませんか?
参考書籍:『やさしくわかる! 毛髪医療最前線』(朝日新聞出版・刊)